放課後

生徒会のメンバーは生徒会室で唸りながら解決策を考えていた。
が、お茶を飲むこと5杯。
お茶を消費するばかりでアイデアは一向に出てこない。
トイレに行く回数ばかり増えていく。
それを出してもしょうがないのである。

「とりあえず、昨日の映像を一回解析してみようか」

羊川が現状を打開すべく、昨日撮影した画像を取り出して、よくわからないコードをつないでカチャカチャとPCで何かしらプログラムを立ち上げていく。
時折「む」とか「これは」とかいう声が聞こえるが、他のメンバーは緑茶から紅茶にお茶を変えて、お茶菓子を物色し始める。

「会長、お茶菓子が少なくなってるよ」
「もう今学期も終わりだから、年明けたら新しく買うようにしよう」
「テストやだなー」
「あ、この紅茶美味しいね」

完全なるオヤツタイムである。

「なるほど!そういうことか!」

数分後一人納得がいった様子の羊川以外は「このバームクーヘン美味しいね」「こっちのポテトチップスもなかなか…」とオヤツ談義に花を咲かせている。

「いや、もうちょっと興味持とうよ!?」
「あれ、羊川なんか分かったのか?もぐもぐ」
「くっ一人で頑張っている間に美味しそうなバームクーヘンとポテトチップが…」

机の上の惨状に膝から崩れ落ちる羊川。

「だ、大丈夫ほら!羊川くんのためにちょっとだけ残してあるから」

思ったよりがっかりしている羊川を見て慌てて天知がフォローを入れるが

「って、それ残してあるっていうか残骸だよね!?ひどい!」

悪化をするだけである。

「まあまあ、ほらななちゃんなでなでさせてあげるから、何が分かったのか教えてよ」
「む…なでなでなでなで…映像を解析してたらな、どうやら日没前の5分だけ、あの木が金色に光るんだ」
「それは昨日見たから知ってるけどー」
「で、その時の木の葉は月の精の力が宿っているんだ」
「その状態で伝説の木の葉を採って、太陽に届ければ…」
「月の思いが太陽に届く、と」
「そう」
「なんかクリスマスらしいロマンチックな感じになってきたねー」
「そしたらさっそく、葉っぱを取りに行くぜ」
「おー!」

事件解決の糸口が見えた金髪一行は伝説の木に向かうのだった。

*******************

「あと3分27秒で葉が金色に変わるはずだ」
「ごくり…」

昨日とほぼ変わらない時間。
空が橙色と深い青とが混ざるこの時間を英語ではマジックアワーやマジックタイムとも呼ばれる。
昼でも夜でもない一瞬の不思議な時間帯。

「あ…」
「光った」

昨日はちゃんと見ていなかった葉が金色に輝く瞬間は、まるでこの時期街に溢れるクリスマスツリーのようだった。
天辺からキラキラと金に輝き下へとその輝きが広がっていく。

「綺麗だねー」
「うん」
「はっ!見とれてる場合じゃなかった、葉を採らないと!」

全員で木に近づくと、太い木の幹の中に夢でみた女の子がいるのがうっすらと透けて見える。
木の幹がガラスの入れ物みたいになっていて、その中に女の子が入っている、という感じだ。

「これ割ったら…」
「犬飼、すぐ物理に走ろうとしない」
「じゃあマントでひとっとびして木の上から…」
「べつに上に穴が開いているとは限らないだろう」
「じゃあ魔法で…」
「お前の格好が変わったところで木の幹にダメージは与えられない」
「エターナル「「「左目は封印しとけ!」」」…ちぇー」

木の幹から女の子を救い出そうとするが、うまくいかない。
というか物理と特殊魔法は使ってはいけない。
そんなとき、幹の中の女の子が手をこっちへと差し出すと、木から数枚の葉が全員の前に落ちてきた。

「あ、葉が」
「羊川これ、どうしたらいいんだ?」
「そしたらみんなの分をくっつけてリング状にしよう」

人数分の葉をぐるっと円を描くようにくっつける。さながら月桂樹の葉で作られた冠のようだ。

「で、どうする?」
「太陽の精霊に気がついてもらうんだけど…」
「太陽に気がつけーって声でもかけてみる?」
「届くかな…?」
「うーん。犬飼、投げるか?太陽に向かって」
「そっちのほうが届くの?」
「おう、任せろ運動部部長の実力を見せてやる」

そういうと犬飼は葉のリングを持って、ブンブンと振り回し…えいや、と沈みつつある太陽へと放つ。

「すごい速度だ」

見えなくなりキラーん、と星のように消えていく。

「…」
「…」
「…」
「…」
「なあ、羊川」
「物理で解決されたら俺にもわからない」
「なあ、犬飼」
「がんばりました!」

しばらく様子を見るが、木も投げたあとも何の変化も起こらない。

「やっぱ物理はだめだったか」
「しょうがない、もう一度葉っぱもらう?」
「ごめーん!失敗しちゃったからもう一枚頂戴?って?」
「啓太がてへぺろっていってお願いしてきなよ」
「やだよなんで俺なんだよ。犬飼がいけよー」
「えー要ちゃんかわいくおねだりしてきてよ」
「お願いじゃなくておねだりになってるんだけど??」
「それは…断られる気がしないな…」
「何で僕じゃないのに無駄なその自信みなぎらせてるの!?」
「あれ、ねえ、あれって…」

葉を取った木を指さして何か気が付いたように陸奥が声を上げる。
見ると、金に輝いていた木を、カラフルな光の玉が取り囲んでいる。
オレンジ、ピンク、紫、白、緑、青、黄色に赤。
8色の色に取り囲まれた木の幹は眩しいほどに輝くと、女の子が一人、現れる。
すると、8色に光っていた光が集まり、人の形に変化していく。

「わお。イケメン」
「あれが太陽の精霊ってやつか」
「モテるやつは全員敵」
「こらこら、折角で合わせた二人を俺たちで壊してどうする」

不穏な空気になりつつあるのを御影がいなすと、太陽と月の精霊の2人がみんなに頭を下げる。

『ありがとう』

鈴が鳴るような音で女の子はお礼を言う。

『100年の願いが叶いました』
『皆様のおかげで彼女とようやく出会えました』

男の人もそういって頭を下げる。

「リア充は爆ぜるといいのに…」
「まじでイケメンとか滅びろ」

色んな意味でいままでやってきたことが台無しな事を言う。

『あの、これ、お礼です』

そんな彼らに女の子が手をさしだす。
すると全員の手に金色の何かが現れる。

「あ、これ」
「葉っぱ…?」
「葉っぱが金になった…?」

『それは幸せのお守りです。皆さんに幸せが訪れるように、願いを込めました。私の願いをかなえてくれたお礼です』

生徒会のメンバーの手にはチェーンのついた金に輝く葉のついた小さなブレスレットだった。

『私の月の光の雫をたっぷりとしみこませてあります。辛い事も乗り越えられるよう、幸せがいっぱい皆様のもとに訪れるよう、願いを込めました。』

にっこり笑うと

『皆様にも幸せが訪れますように』

そう言って、太陽と月の精霊はふわりと笑うと、すっと消えていく。
残された木も金色の輝きが静かに消えていく。

「とりあえず?」

「解決したって感じ?」

全員手のなかにあるブレスレットをみつめながら、空を見上げるのだった。

*******************

「トモヒサー日本から何かエアメールが届いているわよ?」
「グランマ、ありがとう!何だろう近況報告かな?」
「アナタのお友達は色んなお話を持ってきてくれるからとても楽しいわ」
「今回はなんだろう…?あれ、何か入ってる。ブレスレット…?」
「ナニが書いてあるの?」
「えーとね。ふふ。僕の友人たちは、どうやら太陽の神様と月の神様に会ったらしいよ。これは僕へのクリスマスプレゼントみたいだ」
「なんだか楽しそうね。詳しく聞かせてくれる?」
「じゃあお茶を飲みながら手紙の内容を話すよ」

【END】